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最高裁判所第一小法廷 昭和42年(行ツ)84号 判決

上告人

群馬中央バス株式会社

右代表者

岩崎照雄

右訴訟代理人

田代源七郎

町田繁

被上告人

運輸大臣木村睦男

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担する。

理由

上告代理人田代源七郎の上告理由第一点及び第四点の第一について。

論旨は、要するに、一般乗合旅客自動車運送事業及びその免許の性質をいかに解するかは、道路運送法六条一項所定の免許基準及び関係法令の解釈に著しい差異を生ずるところ、一般乗合旅客自動車運送事業を国家の独占事業としその免許を公企業の特許と解した原判決は、憲法前文第一段、憲法二二条一項に違背し、道路運送法四条、六条ないし八条、一二条、一五条、一六条、三三条、三四条、四一条、一二二条の二、運輸省設置法六条の解釈を誤つたものであるというのである。

原審は、まず、一般乗合旅客自動車運送事業を独占の一形態でありその免許を公企業の特許であるとしたうえで、運輸大臣は、道路運送法六条一項に定める基準のすべてに適合し、かつ、同法六条の二の欠格事由に該当しない場合でなければこれを免許することができず、右基準のいずれかに適合しないときは申請を却下しなければならないものであり、また、右免許基準に適合するかどうかの判断は羈束裁量に属すると解し、この見解に基づき、本件免許申請につき同法六条一項一号の基準に適合しないとした被上告人の判断の適否について検討し、右判断は相当であるとするとともに、他方、行政庁が行政処分を行うにあたつては、事実の認定、法律の適用等の実質的判断はもとより、その手続についても公正でなければならないと解し、この見解に基づき、本件免許申請に対する審理手続を検討し、右審理手続上においても違法は認められないとしたのである。

しかしながら、自動車運送事業の免許の性質を公企業の特許と解するかどうかは、必ずしも、本件の結論に影響があるものとは考えられない。すなわち、自動車運送事業は高度の公益性を有し、その経営は直接社会公共の利益に関係があるものであるから、憲法二二条一項にいう職業選択の自由に対する公共の福祉に基づく制限として、道路運送法は、四条において、自動車運送事業を経営しようとする者は、運輸大臣の免許を受けなければならないとし、六条一項において、免許基準を設け、また、六条の二において、欠格事由を定めているのであり(当裁判所昭和三五年(あ)第二八五四号同三八年一二月四日大法廷判決・刑集一七巻一二号二四三四頁参照)、これにより、運輸大臣は、右免許基準のすべてに適合し、かつ、右欠格事由に該当しない場合でなければ免許を付与してはならない旨の拘束を受けるものと解されるのであつて、自動車運送事業の免許の性質を公企業の特許と解するかどうかによりこの理が左右されるものではない。もつとも、右免許基準は極めて抽象的、概括的なものであり、右免許基準に該当するかどうかの判断は、行政庁の専門技術的な知識経験と公益上の判断を必要とし、ある程度の裁量的要素があることを否定することはできないが、このことも、自動車運送事業の免許の性質を公企業の特許と考えるかどうかによつて差異を生ずるものではない。また法は、道路運送法一二二条の二、運輸省設置法六条一項七号、八条以下、運輸審議会一般規則等において、右免許の許否の決定の適正と公正を保障するために制度上及び手続上特別の規定を設け、全体として適正な過程により右決定をなすべきことを法的に義務づけているのであり、このことから、右免許の許否の決定は手続的にも適正でなければならないものと解されるのであつて、自動車運送事業の免許の性質を公企業の特許と解するかどうかによつてこれが左右されるものではない。そして、本件却下処分が実体的判断においても審理手続上においても違法でないとした原判決が結論において正当であることは、後に判断するとおりである。したがつて、論旨は、ひつきよう、原判決の結論に影響のない事項についてこれを非難することに帰着し、採用することができない。

同第二点について。

所論は、要するに、上告人が、原審において、憲法三一条は刑事手続のみならず行政手続にも適用ないし準用があり、したがつて、一般乗合旅客自動車運送事業の免許の許否を決する手続は公正でなければならないと主張したのに対し、同条が行政手続にも適用ないし準用があるか否かにつき判断を示すことなく原判決の結論に導いたのは、憲法三一条の解釈を誤つたものであり、理由不備であるというのである。

一般乗合旅客自動車運送事業の免許の許否は、国民の基本的人権である職業選択の自由にかかわりをもつものであるから、法は、道路運送法六条において免許基準を法定するとともに、他方、右免許の許否の決定の適正と公正を保障するために制度上及び手続上特別の規定を設け、全体として適正な過程により右の決定をなすべきことを法的に義務づけていることは、前述のとおりである。そうすると、憲法三一条が行政手続にも適用ないし準用されるかどうかは、特にこれを論ずる必要はないところであり、原審がこの点の判断をしなかつたとしても、なんら違法ではない。論旨は、採用することができない。

同第三点について。

所論一の(一)指摘の原判決の判示は、本件免許申請に際し上告人が挙げた推定利用人員から上告人が本件申請路線に期待する輸送需要を推認したにすぎず、右推定利用人員の割合を正当として是認したものでないことは判文上明らかであるから、所論一の(三)指摘の原判決の判示となんら矛盾するものではない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、原判決を正解しないでこれを非難するものであつて、採用することができない。

同第四点の第二について。

所論の点に関する原審の判断は正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第四点の第三及び第四について。

論旨は、要するに、運輸大臣が東京陸運局長に指示して行わせた聴聞手続及び運輸審議会の審理手続は適正な手続といえないにもかかわらず、これを違法な手続でないとし、また、運輸審議会の審理手続に違法があつたとしてもその答申に基づく運輸大臣の処分は違法ではないとした原判決は、道路運送法一二二条の二、六条一項、三項、運輸省設置法六条の解釈を誤つたものであるというのである。

一般乗合旅客自動車運送事業の免許の許否を決するにつき、法が、その免許基準を法定するとともに、右基準に該当するかどうかの判断の適正と公正を担保するために、制度上及び手続上特別の措置を講じていることは、前述のとおりである。これを詳述すれば、道路運送法一二二条の二は、陸運局長は、同条二項所定の場合には、聴聞をしなければならない旨規定し、運輸省設置法六条一項七号は、運輸大臣が自動車運送事業の免許の許否を決する場合には、運輸審議会にはかり、その決定を尊重して、これをしなければならないと定め、同法八条以下において右審議会の機構及び手続を規定し、特に、同法一六条は、運輸審議会は、同法六条一項の規定により附議された事項については、必要があると認めるときは、公聴会を開くことができ、又は運輸大臣の指示若しくは運輸審議会の定める利害関係人の申請があつたときは、公聴会を開かなければならないと定め、更に運輸審議会一般規則一条は、運輸審議会は、事案に関し、できる限り公聴会を開き、公平かつ合理的な決定をしなければならないと規定している。これらの規定を通覧すると、一般乗合旅客自動車運送事業の免許の申請があつたときは、原則として、法定の免許基準に該当するかどうかにつき、陸運局長が利害関係人又は参考人に対する聴聞を行い、更に運輸大臣の諮問を受けて、運輸審議会は、公聴会を開いて審理し、これに基づいて許否に関する決定(答申)を行い、運輸大臣は右の決定を尊重して最終的な許否の決定を行うべきものとされていることが知られるのである。このように、法が前記免許の許否を決定するについて原則として陸運局長の聴聞や運輸審議会の公聴会における審理を要求しているのは、免許の許否の決定の重要性にかんがみ、聴聞又は公聴会の審理手続を通じて、免許基準該当の有無の判断に関係のある事項につき、免許申請者のみならず許否の決定について重大な利害関係を有する者に対しても、意見及び証拠その他の資料を提出する機会を与え、判断の基礎及びその過程の客観性と公正を保障しようとする趣旨に出たものであることが明らかである。

このように見てくると、一般乗合旅客自動車運送事業の免許の許否の決定手続において、陸運局長による聴聞及び運輸審議会における公聴会は、それぞれ重要な使命と役割を有するものというべきであるが、その重要性の程度、したがつてまたその手続上の瑕疵が運輸大臣による許否の決定の法的効力に及ぼすべき影響については、両者の間に差異があり、これを区別して考察する必要がある。すなわち、運輸審議会が機構的に運輸大臣から独立した地位と構成をもつ第三者的機関であるのに対し、陸運局長は運輸大臣の純然たる補助機関であり、またその行う聴聞も、運輸審議会における公聴会に比して簡略であることが予定されていると見受けられること、更に運輸審議会の決定に対しては運輸大臣がこれを尊重すべき旨を特に法が定めていること等から考えると、免許の許否の決定に関する審理手続において最も重要な意義を有するのは、運輸審議会における公聴会であり、陸運局長の聴聞は、主として運輸審議会における公聴会審理が行われない場合に特別の価値をもつものであつて、これが行われる場合には、単なる補充的な意義及び機能しか有しないものと解せられる。そうすると、陸運局長の聴聞が右のような従たる意義しかもたない場合には、たとえその聴聞手続に瑕疵があつたとしても、最終的な運輸大臣の許否の決定自体を取り消さなければならないほどの違法があるものとするには足りないと解するのが相当である。原審の確定したところによれば、本件免許申請については運輸審議会に諮問がなされ、同審議会において公聴会が開催されたというのであるから、仮に、陸運局長の聴聞手続に所論の瑕疵があつたとしても、本件却下処分を取り消すべき事由とはならないものといわなければならない。

しかしながら、運輸審議会における公聴会審理の瑕疵については、これと同一に論ずることはできない。さきに述べたように、運輸大臣は、自動車運送事業の免許の許否を決する場合には、原則として運輸審議会にはかり、その決定を尊重して、これをしなければならないとされている。法は、運輸大臣が運輸審議会の決定を尊重すべきことを要求するにとどまり、その決定が運輸大臣を拘束するものとはしていないから、運輸審議会は、ひつきよう、運輸大臣の諮問機関としての地位と権限を有するにすぎないものというべきであるが、しかしこのことは、運輸審議会の決定が全体としての免許の許否の決定過程において有する意義と重要性、したがつてまた、運輸審議会の審理手続のもつ意義と重要性を軽視すべき理由となるものではない。一般に、行政庁が行政処分をするにあたつて、諮問機関に諮問し、その決定を尊重して処分をしなければならない旨を法が定めているのは、処分行政庁が、諮問機関の決定(答申)を慎重に検討し、これに十分な考慮を払い、特段の合理的な理由のないかぎりこれに反する処分をしないように要求することにより、当該行政処分の客観的な適正妥当と公正を担保することを法が所期しているためであると考えられるから、かかる場合における諮問機関に対する諮問の経由は、極めて重大な意義を有するものというべく、したがつて、行政処分が諮問を経ないでなされた場合はもちろん、これを経た場合においても、当該諮問機関の審理、決定(答申)の過程に重大な法規違反があることなどにより、その決定(答申)自体に法が右諮問機関に対する諮問を経ることを要求した趣旨に反すると認められるような瑕疵があるときは、これを経てなされた処分も違法として取消をまぬがれないこととなるものと解するのが相当である。そして、この理は、運輸大臣による一般乗合旅客自動車運送事業の免許の許否についての運輸審議会への諮問の場合にも、当然に妥当するものといわなければならない。

ところで、一般乗合旅客自動車運送事業の免許の申請があつた場合には、運輸大臣は原則として運輸審議会に諮問すべく、これを受けた運輸審議会は原則として公聴会を開いて審理したうえ決定をしなければならないことは、右に述べたとおりであるが、右の運輸審議会における審理及びこれに基づく決定の手続については、運輸省設置法及び運輸審議会一般規則にかなり詳細な定めが置かれている。しかし、これらの手続規定がいかなる趣旨、目的を有するものであり、したがつてその手続の運用についていかなる配慮を施すべきものであるかは、これらの規定自体からは明らかではなく、専ら審理手続の意義と性格に照らしてこれを決すべきものであるところ、公聴会の審理を要求する趣旨が、前記のとおり、免許の許否に関する運輸審議会の客観性のある適正かつ公正な決定(答申)を保障するにあることにかんがみると、法は、運輸審議会の公聴会における審理を単なる資料の収集及び調査の一形式として定めたにとどまり、右規定に定められた形式を踏みさえすれば、その審理の具体的方法及び内容のいかんを問わず、これに基づく決定(答申)を適法なものとする趣旨であるとすることはできないのであつて、これらの手続規定のもとにおける公聴会審理の方法及び内容自体が、実質的に前記のような要請を満たすようなものでなければならず、かつ、決定(答申)がこのような審理の結果に基づいてなされなければならないと解するのが相当である。すなわち、道路運送法六条一項の定めるところによれば、一般自動車運送事業の免許基準は、当該事業の開始の輸送需要に対する適切性、当該事業の開始による当該路線又は事業区域に係る供給輸送力と輸送需要量との均衡、当該事業遂行計画の適切性、適確な事業遂行能力の有無、当該事業の開始の公益上の必要性及び適切性等広い範囲において相互に関連する幾多の考慮事項を含み、かつ、その判断基準自体が著しく抽象的、概括的であるため、これについて客観的に適正かつ公正な判断を可能とするためにはその基礎となるべき関連諸事項に関する具体的事実について、多面的で、かつ、できるだけ正確な客観的資料をあまねく収集し、その分析、究明に基づく事実の適切な認定のうえに立つて、輸送に関する技術上及び公益上の適正な評価と比較考量を施さなければならないのであり、しかもこの判断たるや、事柄の性質上、ある程度の見解の相違をまぬがれないものであるため、政策遂行上の責任者である決定権者に対して、この点につき、ある程度の裁量の余地を認めざるをえないのである。しかもこれに加えて、免許の許否が、ひとり免許申請者のみならず、これと競争関係に立つ他の輸送業者や、一般利用者、地域住民等の第三者にも重大な影響を及ぼすものであることにかんがみると、許否の決定過程における申請者やその他の利害関係人の関与が決定の適正と公正の担保のうえにおいて有する意義は格別のものがあるというべく、この要請にこたえて法が定めた運輸審議会の公聴会における審理手続もまた、右の趣旨に沿い、その内容において、これらの関係者に対し、決定の基礎となる諸事項に関する諸般の証拠その他の資料と意見を十分に提出してこれを審議会の決定(答申)に反映させることを実質的に可能ならしめるようなものでなければならないと解すべきである。特に免許申請者に対する関係においては、免許の許否が直ちにその者の職業選択の自由に影響するものである関係上、免許の許否の決定過程におけるその関与の方法につき特段の配慮を必要とするのであつて、前記のような免許基準の抽象性と基準該当の有無の不明確性のために、行政庁側からみてその申請計画に問題点があると思われる場合であつても、必ずしもその点が申請者には認識されず、そのために、これについて提出しうべき追加資料や意見の提出の機会を失なわせるおそれが多分にあることにかんがみるときは、これらの点について申請者の注意が喚起され、あるいはまた、他の利害関係人の反対意見や資料の提出に対しても反駁の機会が与えられるようにする等、申請者に意見と証拠を十分に提出させることを可能ならしめるような形で手続を実施することが、公聴会審理を要求する法の趣旨とするところであると解さなければならない。

右の見地に立つて本件を見るに、原審が確定した事実によれば、運輸審議会は「草津町と高崎、伊勢崎、太田の諸都市とを結ぶ交通機関としては、長野原、渋川経由の経路により既設の交通機関の乗り継ぎによる方が、申請路線によるよりも運転時間、運賃等の面において便利であると考えられるので、上告人による申請区間におけるバス運行の開始は、現状においては、その緊要性に乏しく、上告人の申請は、道路運送法六条一項一号及び五号に適合しない。」との理由で、本件免許申請は却下することが適当である旨の答申をしたものであつて、要するに、申請計画による申請者の事業内容が既設輸送機関のそれに比して運転時間、運賃等の面において便利性に劣ることを決定的要因として、輸送需要と供給能力との関係において適切性と公益上の必要性を欠くとされたのである。ところで、原審の認定したところによれば、上告人の本件申請計画における右の諸難点については、すでに、右公聴会において、一応、他の利害関係人からの指摘がなされており、また、運輸審議会の委員からも、上告人の申請計画に関して乗車回数の推定根拠、乗車密度、平均乗車粁、道路舗装状況等について質問がなされたというのであるから、上告人においても、右申請の問題点が何であるかについては、おおよそ推知することができたものと考えられるのであるが、さらに進んで問題をより具体化し、上告人の事業計画並びにその根拠資料における上記運賃、輸送時間の比較及びこれとの関係における輸送需要(見込)量と供給力との均衡等に関する問題点ないしは難点を具体的に明らかにし、上告人をして進んでこれらの点についての補充資料や釈明ないしは反駁を提出させるための特段の措置はとられておらず、この点において、本件公聴会審理が上告人に主張立証の機会を与えるにつき必ずしも十分でないところがあつたことは、これを否定することができない。しかしながら、原審が当事者双方の完全な主張・立証のうえに立つて認定したところによれば、運輸審議会が重視した上記のごとき既設輸送機関との運賃及び輸送時間の比較については、本件処分当時においても、申請路線によるそれが、所要時間において相当に劣り、また運賃も太田、草津間を除いては計画自体においてもすでに他の輸送機関のそれよりも高額であるのみならず、上告人が申請路線について旅客に対し適切な役務を提供するに足りる企業の採算性を維持しようとするためには、遠距離逓減率を考慮しても申請にかかる運賃を根本的に修正しなければならないこととなり、既設交通機関を選択した場合の運賃と比較すれば、その差異は、太田、草津間においても、またその他の区間においても相当の懸隔を生ずることが明らかであるというのであり、原審が右認定の理由として説くところから見ても、仮に運輸審議会が、公聴会審理においてより具体的に上告人の申請計画の問題点を指摘し、この点に関する意見及び資料の提出を促したとしても、上告人において、運輸審議会の認定判断を左右するに足る意見及び資料を追加提出しうる可能性があつたとは認め難いのである。してみると、右のような事情のもとにおいて、本件免許申請についての運輸審議会の審理手続における上記のごとき不備は、結局において、前記公聴会審理を要求する法の趣旨に違背する重大な違法とするには足りず、右審理の結果に基づく運輸審議会の決定(答申)自体に瑕疵があるということはできないから、右諮問を経てなされた運輸大臣の本件処分を違法として取り消す理由とはならないものといわなければならない。

そうすると、原判決は結論において正当であり、論旨は、右と異なる見解に立つて原判決を非難するものであつて、採用することができない。

同第四点の第五について。

所論の点に関する原審の判断は正当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第五点について。

一般自動車運送事業の免許は、道路運送法六条一項各号所定の基準のすべてに適合する場合でなければこれをすることができないものと解すべきことは、さきに述べたところであり、右基準の一に適合しない場合には、運輸大臣は免許の申請を却下することができることは明らかである。所論の事由は同条一項五号の基準に関するものであるところ、原審の確定した事実関係のもとにおいて、本件免許申請が同条一項一号所定の免許基準に適合しないとした運輸大臣の判断を違法と断ずることはできず、したがつて、同条一項五号所定の免許基準に適合するか否かの運輸大臣の判断の適否につき判断するまでもなく本件却下処分は違法でないとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は、原判決を正解しないでこれを非難するものであつて、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(下田武三 藤林益三 岸盛一 岸上康夫)

上告理由〈省略〉

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